美容室に限らず「立地」というのは、大切なポイントだと言うことは何となく感じていると思います。いざ、お店をどこに出そう・・・と考えた場合は、いろいろ思いあえぐことになると思います。それは立地条件が良いほど「家賃」や「保証金」が高くなるという傾向があるからです。
ところで、美容室開業に際しての立地とは「美容室を営むのに適した土地を選び決めること」である。そこで今回は、具体的に「美容室の立地条件」と言った場合にポイントは何かを考えてみたいと思います。
- 交通網
- 通行量
- 周囲の居住者の生活レベル
- 環境
- 雰囲気
などが考えられる項目であり、ポイントになると思います。
A.交通網
まず、開業予定場所周辺の
- バス
- 電車
- タクシー
などの本数や便利度を確認しましょう。又、店舗内に駐車場が用意できる場合には、賃貸家賃と駐車代が別なのか込みなのかも確認しておきます。もし
- 駅前で美容室を開業しようと決めているなら、
- 駅から徒歩5分~10分以内で
比較検討します。
徒歩10分を超える距離を往復するのは女性にとってキツいからです。男性の場合はセカンドバックやウエストポーチなど小さめの手荷物が多いのですが、女性は比較的肩から下げるバックや手荷物を持っている方が圧倒的に多いので距離や坂道は来店時の「ネック」になってしまいます。
さらに来店の道順の途中に、踏み切りや登り坂・下り坂など障害と思えるようなものがないかどうか、歩道の道幅が充分とられているかも同時に確認するよう、自分の足で歩いてみましょう。可能なら、家族や知り合いの女性にお願いしましょう。
B.通行量
営業時間が日中の予定であれば、昼間の時間帯に「車や人・自転車」がどのくらい行き来するかを見ておきます。開業予定店舗の周辺のお店(レストラン・和菓子屋・喫茶店・美容室など)にお客様がどの交通機関を利用しているか知る事が大切で、それによって駐車場数や自店での送迎も検討する事もあるでしょう。
美容室の場合はお客様の殆どが女性で、お店のターゲットによっては40代以降になる場合もあると思うので、
- 店舗前の通行人
- 自転車
- 車の通行量が多い
と車での出入りが難しくなるので、交差点や信号機付近は避けた方が良いのです。このようなちょっとしたことでも、お客様のストレスになりますので注意が必要です。
さらに、1階と2階以上の店舗の違いを意識して見ておきましょう。可能なら1階での営業を目指して下さい。歩く女性が、サロン内を見て興味を持ってもらえる事や店舗前でチラシの手配りやAタイプ看板などの設置も堂々と出来ますので、開業後もメリットが大きいのです。
C.生活レベルのプロファイル
歩いている人を見るとその街にどんな人たちが住んでいるのか、大まかに掴むことが出来る。環境とも重なるが、小中学校や保育園が多いところは主婦層が多く、その周辺には学習塾や英語塾もたくさんある場合が多い。子供の教育費に出費が多いので、おしゃれに回る金額は小さいと言える。
漁業水産関係など港が近い立地の場合、
- 女性も男性並みに仕事をしている人が多いため、
- 日焼けやしわで悩む女性が多い。
- 漁協の婦人部などで横のつながりが強い
のが特徴。「あそこの美容室は良いよ」とリーダー的存在の女性が言うと、お客様の口コミは一気に広がる。
ただ、その逆もあり。お金は惜しまないので、アプローチを工夫する。禁漁期間や時化(しけ)[風雨で海が荒れていて漁が出来ないこと]で船が出ない時は、ご主人が自宅にいるタイプとパチンコなどに出掛けて不在にするタイプに分かれる。夕方には自宅に戻りたい方が多いので朝一番や午前中の予約や直前予約が多い。
農業関係者が多い立地の場合は、
- 田植えや収穫時期などの「繁忙期」と
- 梅雨時期など「閑散期」がある。
この部分は漁業と共通していて雨の日に美容室に来店する確率は上がるが、一口に農家と言ってもビニールハウス中心の野菜・くだもの・お花などの場合は当てはまらないので、事前に調べることも必要。
漁業や農業関係の女性に共通するのは「帽子やタオル・手ぬぐい」などを頭にかぶるのでパーマメニューが欠かせない。又、冠婚葬祭など地域のコミュニティ(結びつき)が強いので、同日にセットと着付けなど集中する場合が多くなる。一部、噂話や悪口を言いふらす客もいるので、適当にあしらっておくことである。
D.環境や雰囲気
都市部ではなく、地方であればお客様の移動手段はほとんどの場合自家用車になるので、自分やスタッフの分も含めて駐車場は充分確保する必要がある。そのため物件を探す場合には、はじめから「駐車場付き物件」を選ぶ。それが無理でも「共有駐車場」がある物件を選ぶこと。
- とくに都市部の場合
- 駐車場付き物件でも
- 「自走式」と「機械式」があり
- 車幅・車高制限などあらかじめ確認
しておきましょう。「道路づけ」と言って道路に面している物件の場合、道路からすぐに駐車場に入れる物件がベストである。
コイン駐車場や月極駐車場の場合、長い目でみると駐車場がいつの間にかビルに変わったり、他の物件に変更になってしまう物件があるので注意が必要。
敷地内にある駐車場ならこういう心配がないので安心できる。
その他、意識しておきたいポイントは以下。
- 土地面積、延床面積、間取り、構造、築年数→火災保険の料金などに関連
- 価格・賃料→自己資金・借入に関連
- 立地(最寄駅、駅までの距離、接道・利便性)→踏切・坂道・歩道の幅など
- 施設情報(店、学校、保育園、病院)→近所の店を見て今後活性化が期待できるかどうか
- 日照・通風→快適性・空調設備に関連
- 眺望→場所によっては店のウリになる(店から水平線が見えるとか)
- 土地柄→美容室の店格に影響
- 安全性→昼夜人通りが多ければ、安心
- 保健性→飲み屋街が近いと、ゴミ・ゲロ・お小水の問題など
突き詰めて考えると際限なく、夜も眠れなくなりそうですが「後で変更できない」ので、絶対に後悔しないようよく考えておくことです。自分の美容室のブランドイメージやターゲットとする客層などを考慮し、さらに料金設定から立地条件を考える必要があるでしょう。
ただし、魅力的な物件に出合った場合は、その物件の立地によって「サロンイメージ」「料金」「ターゲット」まで変えて改めて検討し直してしまうと言う勇気が必要かも知れません。
まとめ
私の考える、理想的な立地条件の美容室というのは
- 1階でバリアフリー
- 敷地内に駐車場(共同駐車場)あり
- 面している道路が片道2車線で、信号機(交差点・三叉路など)から離れていること
例えば、スーパー内の美容室は、共同駐車場の場合が多いですね。ターゲットとなる年齢層は主婦層・高齢者が多くて、サロンイメージもデパートや百貨店内の美容室とは違って、おしゃれ度はさほど高くなく、高級なイメージは無いので高料金の設定は無理と言うことになります。
立地条件のまとめ
地方の美容室に多いのが、自宅とサロンを一緒に融合させたお店です。
美容室に限らず、喫茶店やレストランで自宅と一緒になっているお店を時々見かけますが、外に洗濯物や布団が干してあったり、子供たちが駐車場内遊んでいたり・・・とどうしても経営者の私生活を感じさせてしまいます。
昔の美容室は日常の延長線の一部という考えもありましたが、最近の働く女性にとっては現在求められている美容室というのは、
- 非日常的な空間であって
- リラックスしたい場所
- くつろぎたい場所
- いつもと違う自分に出会える場所(イメチェン・メイク・着付け・ネイルなど)なのです。
このようにお客様が美容室に求めているものが「非日常的な空間」である以上、私生活をどうしても感じさせてしまう「自宅+サロン」は営業的に厳しく思えるのです。たしかに女性の美容師にとって「自宅+サロン」は、掃除・洗濯・食事などの家事や親・子供の面倒など何かと便利ですが、それだけに緊張感が伴わず開業後失速してしまう場合が多いのです。
私的には美容室と自宅は別々にすべきだと、いろんな美容室を見て来て提案したいと思います。子供さんがまだ小さい時期は、サロンの近いところに自宅を置くのが良いでしょう。