あなたは自分のお店の「メニューと料金」は何を基準に考えますか?立地ですか?イメージとかお店のコンセプト?それとも使用する薬剤など材料費まで計算して設定しますか?
お客様の立場から料金を考えてみたとき、大概(たいがい)の方は
- 駅前で広くて商売に向いているところだから家賃が高い=料金が高い美容室とか
- 看板や外装内装が高級にできていてホテルみたい=高料金の美容室
という印象を持っています。
以前の記事で
- 売り上げ100に対して→家賃8
- 売り上げ100に対して→人件費30~38の比率
であるとお話しました。美容室におけるそれぞれのメニューと料金は適当に決めるのではなく、計算で簡単に決めることができますので是非覚えておいてください。
これを覚えておくだけで、メニューと料金そして従業員の方も自分の給料の計算が自分でできるようになります。
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1.美容メニューの料金設定と経費の関係
美容室経営にとって、メニューと料金の関係はとても重要なテーマです。メニューの売れた数が施術売り上げそのものだからです。あなたが自分の美容室の料金をどの価格帯で販売するか、メニュー料金はそれで決まるわけです。
料金の決め方に関してはいろいろな考え方があると思います。特定のメニューだけを他のサロンよりも極端に安くして、それをきっかけにしてお客様にご来店してもらうやり方もあります。これはマーケティングの手法の一つをまねたもので、
- フロントエンド商品 ⇨ 魚釣りでいう撒き餌(まきえ) ⇨まいた後はいろんな魚が寄ってくる
- 美容室の場合なら、大多数のお客様(購入者)が買いやすい価格帯で販売する商品やサービスのこと。チラシやネット集客よりも確実で宣伝広告費もかからないし、一度購入していることでリピーターになりやすい
- バックエンド商品 ⇨ ほんとうに釣りたい魚に合わせた餌や針・糸を使う
- 商品やサービスをフロンドエンドで一度体験して「良さ」や「価値」を認識しているため信用度が高いので高額商品を購入する土台が出来ている
このような流れになります。
フロントエンド商品で顧客情報(住所/連絡先/職業/年齢/年収などの個人情報)を得て、その顧客の中からほんとうに売りたい高額商品をターゲットとなる客に販売すると言うやり方です。通販業界や化粧品業界でもよく使いますね。
(例)
- 通常料金15,000円の縮毛矯正→キャンペーン特別料金9,800円
- 通常料金8,800円のパーマ→初回のみ限定料金4,900円
など、実は年中安売り価格で営業している美容室がチラシでこのような価格表示をすることがよくあります。特にスーパーやショッピングセンターの中にテナントとして構える美容室に多いパターンです。もし上記のような価格設定をあなたの美容室がやったとしたらどうなるでしょう。
お客様は割引きを喜ぶどころか、「安い液使ってんのかな」 「いつ行っても安いくせにチラシで安くみせかけて」と、そんな思いを抱くはずです。お客様を来店数でさばいて売り上げを上げているような大型店舗ならいざ知らず、少人数で営業する美容室がこんな料金体系で営業していたとしたら、経営は長くは持ちません。
また、パーマ液やカラー剤の原価や仕入れ価格(これを経費と呼びます)にあわせてメニューづくりや料金体系を設定する美容室もいまだに多いのですが、これは絶対にやってはいけません。たとえばパーマ液の種類と原価が、
- A液→500円/1人分
- B液→1,000円/1人分
- C液→1,500円/1人分
とABCの3種類ある時に、経費(原価)を考慮して
- Aパーマ→5,000円
- Bパーマ→7,500円
- Cパーマ→10,000円
という考えをしてはダメだと言うことです。
技術料金は店販商品とは違うので自分の売りたいメニューでの価格帯、希望の料金で販売することです。薬液や材料費は無視しましょう。カラー剤なども同じ考えで、染毛剤の仕入れ価格ではなく自分の売りたいメニュー(コンテンツ/種類)と料金設定をしましょう。
もし、自分の美容室の料金が周辺の美容室と比較して「高価格」だと感じるなら何かしらのメニューをフロンドエンド商品として売ることを考えておきましょう。原価を考えるのではなく「施術にかかるトータルの時間」で考えてください。
2.美容料金とメニューの関係
メニューを考える時、必ず料金も考えますよね。
メニュー=料金となります。
- あなたがどのメニューで売り出していくか
- メインメニューがあるのか
- いくつあるのか、で考えてみたいと思います。
特定の業種で考えると分りやすいので、ここでは「ラーメン店」で考えます。
- しょうゆラーメン専門店
- つけ麺専門店
- ラーメンと餃子の店
どれが良いかという事ではなく、お客様に伝わるようなメニューにするかどうかなポイントです。美容室も、お店の業態によって
- カラー専門店
- カット専門店
- 縮毛(ストレートパーマ)専門店
- 1000円カットのお店
- ワンコイン(500円)カットサービスの店
などがあるように、たったひとつの専門的なメニューに特化したお店でも経営が成り立っている例はたくさんあります。さらに、ターゲットをあらかじめ絞った考え方では、
- 女性限定サロン
- 男性客大歓迎
- お子様お断り
- 小学生以上
など、事前にお客様を選別した営業方法もあります。
- あなたが考える自分の美容室の料金はどの価格帯になりますか?
- 低料金の店~高級店さらに超高級店があったらどこを狙いますか?
もしあなたが「今勤務しているお店は低料金のお店だけれど自分が開業したら、もう少し高料金のお店にしたい!」と考えているなら、今すぐ高料金のお店に勤めることをおすすめします。
低料金店と高料金店では「店格」=お店としての格式が変わります。それによって来店するお客様の「層」が違うからです。ホテルのサービスの違いで考えると分かりやすいと思います。高級ホテルを利用したお客様は支払った金額以上のサービスをあなたやホテル側に求めます。
それがたとえ「格安料金のメニュー」だったり「無料サービス」だとしても・・・です。
- 低価格帯のホテル→まぁ安いから仕方ない
- 高価格帯のホテル→こんなに料金払ってるのに
こんな風になりますよね。低価格帯のホテルは、料金が安ければ多少の不満はあってもお客様は我慢します。「まぁ安いから仕方ない」そう思えるのです。でも高価格帯のホテルの場合は、多少の不満でもお客様は我慢できません。「こんなに料金払ってるのに」 「高い割にサービスが悪い」と考えてしまうわけです。
あなた自身もサービスを受ける側の立場に立った時、そんな経験があるでしょう。この内容は低料金の善し悪しの話ではなく、客層が違うことでサービスそのものが変わるというお話です。そのことをよく覚えておいてください。
3.美容室経営における、美容料金の決め方
繰り返しになりますが、料金の決め方そのものに決まり(法則)がありません。
ただ開業してからは簡単に値下げしたり値上げしたりはできませんので、自分が納得できる決め方とメニュー料金を準備しておきましょう。
美容(メニュー)料金=施術時間
お店として1時間当たり何円の仕事にするのかで決めます。
私の場合は、 1時間あたり「6,000円」と決めていました。
この考えだと、以下のような料金の設定になります。
- シャンプー10分= 1,000円
- カット&仕上げ40分= 4,000円
- パーマコース1時間40分= 9,000円
- 縮毛矯正コース3時間00分= 20,000円
- カラーコース(トリートメント) 2時間= 12,000円
※縮毛矯正とカラーは、パーマと比較して材料費がかかるので、実際には+アルファ料金で設定しています。この料金設定は 1つの目安になります。この枠にあなた自身とスタッフも当てはめて仕事に当ります。ですから1時間当たりの単価が低ければ美容料金は全体にもう少し抑えた価格帯になりますし、その逆もあります。
下記に売上のサンプルをあげましたので、ご覧ください。
- 開店時間午前9時~夜6時
- 休憩時間が1時間
- 8時間営業
上記のような美容室の場合は、
- 6,000円/H×8時間= 48,000円
- 48,000円/日×25日/月=1,200,000万円
- 1,200,000円×30%=360,000円(給与の目安)
- 360,000円-材料費など=実質の給与金額となります。
仮に当日カットのお客様だけしか来店しなかったとして、
- シャンプー・カット50分
- 営業時間8H=480分
- 480分÷50分(カット時間)=9.6人
- 45,000円売上(9人計算)
になりますので、カットだけお客様だけの1日だったとしても売上目標は充分達成できる計算になります。
美容室メニューと料金のまとめ
メニューと料金は、時間で計算するので家賃や駅前など立地条件に左右されないものであると言う事が理解してもらえたと思います。
以下、今回の内容の確認です。
- メニュー料金は、時間当たりの単価で考える
- 現在低料金店に勤めているが、将来は高料金で経営したいなら高料金美容室勤務の経験を持つ事
- 材料代(経費)が無視できない場合は、料金にプラスして設定する
- スタッフにも算出方法を理解してもらう事によりのんびり感がなくなり、本人も給与計算が出来るのでモチベーションアップにつながる
- むずかしいポイント計算(仕事を作業に分解して、ポイント計算する方法)は必要ない
美容室の場合は、メニュー料金とスタッフ給料額はとても密接な関係があります。スタッフにもこの事実と給料計算の方法を教えてあげて下さい。そうする事で「数字を意識します」ので、仕事に取り組む姿勢も変わります。
私の妻は、以前フランチャイジーとして美容室を経営していました。本部の指導の下、ポイント計算しなくてはならないので給料日前は結構忙しくしています。あなたと一緒に働くスタッフが、自身で計算できる給与体制は経営者としてもスタッフとしても余分な気遣いはいらないのでとっても楽です。
ポイント計算による給与支払い方式は、見習い生や中間生を雇うタイミングでサロンに取り入れても間に合います。この計算は経営者であるあなた自身にも当てはまりますので、ぜひ計算してみて下さい。では又。吉原将行